Education / Collaboration

体や心や命に対して学ぶことが、予防医学に通じると思っています。

ただ、現在の学校教育では、体や心や命に対して深く学ぶことがないまま大人になりますので、体や心に症状が出てから慌てて体のこと、心のことを学び始めることになっています。そうすると、声の大きい断定的な言い方の人や権威ある意見にすがりつきたくなりますし、極めて依存的な状態になってしまいます。それは自分の体を他の人に委ねてしまうことにつながってしまいます。

体や心を学ぶ機会がないことが、現代の医療・健康・福祉などの問題にも大きな影響を与えているのではないかと思っています。学ぶことが大事です。


軽いものから重いものまで、狭いものから広いものまで、あらゆる角度から学ぶことで理解は立体的になります。様々な方と協力してできたものも紹介しております。いつもありがとうございます。


●からだ会議

天才お笑い芸人であるアップダウンのお2人と稲葉の脚本で素晴らしいアニメを作りました。

題して<からだ会議>です。9分19秒の映像。

→Youtube からだ会議~からだの声、聴いていますか?~

脚本:稲葉俊郎(東大病院循環器内科)
映像制作:ぬかづけマン教育委員会
製作:しあわせリンク

ディズニーの<インサイドヘッド>(原題:Inside Out:2015年)というアニメはものすごく面白いアニメでした。ただ、自分が残念に思ったのは、あくまでも<脳内会議(in head/brain)>なので、まさに頭の中だけでからだのことを考えてるご時世が反映されてるなぁと地団太踏んだものでした。大事なのは<からだ会議>なんだ!!、と。自分の中の100兆個の細胞が大合唱していたものです。

自分が書いた<からだ会議>の脚本を、天才お笑い芸人アップダウン(竹森巧さん、阿部浩さん)のお2人がアニメ化してくれたのです。声優も全てお2人。お2人は本当に多才ですごいです。お笑い芸人という枠を超えています。

アップダウンは、ぬか漬けマンとして、漬物や発酵食などの食育の活動もされています。お芝居も見に行きましたが、その演技力も本当にすごいんです。天才としか言いようがありません。自分の周りには天才がたくさんいて、本当に心強いです。未来は明るいです。

自分もプロの脚本家じゃないし、お2人もプロのアニメーターでもない素人の作品です。でも、だからこそ、その分純度の高い素直な作品が作れたと思います。

教育現場や医療現場で教材として使われるといいなぁと切に切に思っています。ユーモアも散りばめられていますので、どんな人でも見れる作品に仕上がっています。

からだにある100兆個の細胞全てが主役ですから続編も無限に作れます。ただ、時間と労力の限界。

(英語版も作りたい。誰かボランティアで協力してください~)

<参考>

アップダウン(吉本興業)(Fb)(Wikipedia

野菜戦士 ぬかづけマン(HP)(動画

アップダウン阿部浩貴さん(HP)(Twitter

アップダウン竹森巧さん(HP)(Twitter


●自然治癒力の本質 (プレジデント社Interview記事より)

『がんが自然に治る生き方』プレジデント社:2014年(ケリー・ターナー(著), 長田美穂(訳))という本があります。(原題:『Radical Remission: Surviving Cancer Against All Odds 』Kelly A., PhD Turner)

この本は、現代医学では「手の打ちようがない」と説明されてしまった人の中で、「劇的な寛解」に至った人たちを集めてInterviewし、「劇的な寛解」が起こった人たちに共通する因子を解析している本です。<この本に書いてあることをすれば全てが解決する>という安易なことを提案している本ではありませんのでご注意ください(著者も本書内で何度も注意を喚起しています)。数例のポジティブな例だけを特別視して拡大解釈するのではなく、地道に1000例以上を調べているのが特筆すべき点です。

「劇的な寛解」に至ったがん患者の「ほぼ全員」が次の9項目を実行していた、というのが本書の結論であり、それぞれが目次となり具体例が示されています。詳細は本書をお読みください。

1.抜本的に食事を変える、2.治療法は自分で決める、3.直感に従う、4.ハーブとサプリメントの力を借りる、5.抑圧された感情を解き放つ、6.より前向きに生きる、7.周囲の人の支えを受け入れる、8.自分の魂と深くつながる、9.「どうしても生きたい理由」を持つ

それぞれの項目は西洋医学と対立するものではなく、相補的に両立するものだと思います。普段からの心がけとしても、予防医学の観点からも重要な示唆に富む本で、興味深く読みました。


プレジデント社からのこの本の感想のInterviewを受け、稲葉が色々と回答しています。基本的には生きている人全員が持つ力である「自然治癒力」が、どういう条件が整えば最も働くのか、ということに本質があると思います。

それに加え、数多くの代替医療がありすぎて、情報難民状態になっている人が多いこともよく経験していますので、「代替療法コーディネーター」のような、広く平等な視点で様々な健康法・養生法を提案できる職業の提案もしています。

ご参考にお読みください。


(2015/10/12の「気功健康セミナー&ヒーリングステージ2015“気は未来を開く”」から依頼があり、稲葉が寄せた文章です。)

●『未来の医療と調和』

自分は大学病院で循環器内科医として勤務しています。医学部の学生時代から、西洋医学だけではなく、東洋哲学含めた科学や哲学や宗教の歴史を学ぶ上で、様々な国の文化や風土に根付いた伝統医療や民間医療にも興味を持ちました。医療の歴史という観点から、知識も実技も共に学んでいます。東洋医学や中医学における深遠・精緻な思想や気功を含めた実践的な施術にも大変興味を持っています。

医療や医学は、人間や自然に関するものであり、本来は豊かで多様なものだと思います。そして、誰か困っている人の役に立ちたい、という切実で素直な思いから発露し、実際的で実用的な側面から発展してきたものだと思います。人の体や心は古代からそう大きくは変わりません。

自分は西洋医学を日々真面目に学びました。循環器内科医なので緊急も多く、24時間365日、お盆も正月も関係なく懸命に臨床に励んでいます。その中で、西洋医学だけでは扱えない領域も多々経験しています。からだを主に扱いますが、からだに触れる事は同時にこころに触れる事です。

今も、京都まで臨床心理士の勉強会に出て心理学も学んでいますし、先天性の心臓の病気を扱うため、発達心理学の勉強もしています。成育歴からひとのこころの成長のことに思いを馳せ、こころの発達の結果としてからだの問題も日々考えさせられます。

自分は学生時代からも医師になってからも、あらゆる代替医療、統合医療、民間医療、統合医療・・・とされるものを気の向くままに勉強しました。100種類以上の領域を学びました。

それは、患者さんのためにできることは何でもしたいと思っているからです。

学ぶ必要があるものは、医療の枠内だけには限りません。

人の体や心、いのちを成立させているものへ多角的なアプローチが必要ですし、生だけではなく死に関しても深く洞察する必要があります。

そのため、衣・食・住はもちろん、音楽や芸術や歴史や民俗学や・・・、様々な領域からの分野や手法を超えたアプローチや協力が必要だと考えています。

現代医療の枠内で理解不能とされている事柄は、医療の枠組みや定義が狭いことが原因だと思います。枠が狭いと、その枠内では理解不能になりますが、枠自体を拡張させると、もっと広く深い理解へ至ることができます。

<医療>の枠組みや定義を狭くしてはみ出るものを見ないふりをするよりも、<医療>の枠組みや定義をもっと自由に拡張してみることができれば、色々な課題は解決できるはずです。だからこそ、他の領域との協力が必要になります。

 

あらゆる医療の世界を自由気ままに動き回りました。

自分はジャンル分けそのものよりも、結局はそこに集っている一人一人の個人のあり方が気になりました。

それは、それぞれの領域に所属している人が、

<自分が一番だ><自分が絶対に正しい><他の療法は間違っている><反西洋医学>・・・などと、一面的に安易に決めつける医療やいのちへのあり方に関してです。

いのちや人間や体や心や魂はそう単純なものではありません。ひとりひとりの人生はすべて違います。医学がもっと開かれていくには、まず医療に関わる人たちの対立的な図式から手をつけないといけないと思いました。善悪や優劣を競う事よりも、いかにして互いを尊重して互いに協力していけるのか、ということが大事だと思ったのです。

人は生まれてから死ぬまで常に成長し続ける存在です。常に発展途上のプロセスにいます。自分の盲点は他者にしか見えないことがありますので、自分自身の軸を持ちながらも、お互いの交流の中で人間性や人格を高めていくことが医療の質を高めていくことにつながると考えました。

そのため、自分は未来医療研究会という集まりをつくりました。異なる領域の人たちが相互理解を図ることを主目的とした場です。相互理解と相互尊重。いいものをいいと言い、悪いものを悪いと指摘し合える開かれた人間関係のあり方こそが、未来の医療への土壌作りになると考えました。未来医療研究会では様々な人たち同士での化学反応が起き、一定の役割を果たしたと考えています。ですが、某週刊誌の全く根拠のない批判のための批判記事を受け、大学にも迷惑をかけたくなかったので、大学とも十分相談し一時活動を自粛しました。大学側からの好意的なアドバイスには本当に感謝しています。

自分は、個人攻撃は一切せずに、その背後にある深い意味を読み解くよう、静かに内省する時期を設けました。

自分は、人の体を診る事を生業にしていますので、ひとのからだのメタファー(比喩)として物事を捉えています。つまり、人の体は60兆個の多細胞の集合体で、それぞれの臓器や組織は専門分化していますが、同時に、すべてが調和・協力して、いのちを成立させています。

病気や症状は、調和へ至るために一時的な不調和になったことを伝える<からだ言葉(暗号、メタファー)>だと思い、その意味を読み解き翻訳していきます。

ですから、今回の批判記事も、社会という自然治癒システムが発動し、「現段階のままで統合医療を進めて言っても、まだ社会的には不安に感じる人も多いし、危険性がまだちゃんと解決できていませんよ。」というメッセージだと受け取りました。

確かに、代替医療の世界は、プラスの側面として西洋医学では扱えない病気に対する有望なアプローチがありますが、マイナスの側面としての危険性も多数あります。ただ、そのことは公にされません。洗脳、スピリチュアルエマージェンシー、お金の問題、組織のあり方など、マイナスの側面は多岐に渡ります。

それは過去の歴史を振り返れば様々な事例があります。 代替医療もプラスの側面だけマイナスの側面だけ、どちらかに偏り過ぎることなく、両方の要素をバランスよく取り上げながら、過去の経験や歴史から共に学びたいと自分は思います。

私たちが一時的に手渡されている自然環境は少なくとも百億年前から続いているものです。

私たちがこの世からいなくなった、少なくとも百年後や数百年後のVisionを持ちながら、次の世代によりよい医療や社会を手渡せるよう、個人の利害を超えて協力して医療の世界を開いていきたいと考えています。

日本は、心身の知恵を、道や芸術という形に美的な世界に昇華して深めていった稀有な文化だと思います。

未来の日本の医療は、日本の文化や歴史や伝統や風土と連続したものとして発展して行くと思います。

そのためには、ひとりひとりが何をできるかを主体的に考えることが基礎になります。からだとの対話も同じだと思います。

誰かに全面的に頼ることや、原因を外に探すのではなく、視点を内側に向け、自分にできるささやかなことから始めたいと思います。

いのちが悠久の過去から一度も途切れることなく続いていることも、そういう小さな積み重ねの結果だと自分は思います。みなさまの知恵を拝借し、いかにして協力していけるのかということをよりよい未来のために実践していければと思います。


文責:稲葉俊郎

●『未来の医療と心身変容』 身心変容技法研究会 第5号(2016/3/31)

稲葉は身心変容技法研究会に参加しています。2015年度まで京都大学 こころの未来研究センターで行われていましたが、研究代表者である鎌田東二先生の京都大学教授退職に伴い、現在は上智大学内のグリーフケア研究所に場所を移動して研究会を開催しています。<科研基盤研究A>もとっている、かなり学術的で硬派な研究会です。身心の問題を、主に宗教学や文化人類学など、広い観点で捉え直す研究会です。

本研究会に稲葉が書いた『未来の医療と心身変容』の論文です。JPG画像をUpしますが、本研究会の報告書は全PDFもUpされていますので、印刷する場合はPDFをDLしてお読みください。

(→第5号 本文(8MB)(稲葉はP129-138))


<参考>

心身変容技法研究会(HP)(研究年報(PDF)

グリーフケア研究所(上智大学)(HP


身心変容技法研究会
【研究代表者】
鎌田東二(上智大学グリーフケア研究所特任教授・京都大学名誉教授/宗教哲学・民 俗学)
【研究分担者】
鶴岡賀雄(東京大学大学院人文社会系研究科教授/宗教学・キリスト教神秘主義研 究)
津城寛文(筑波大学大学院人文社会科学研究科教授/宗教学・神道行法研究)
井上ウィマラ(高野山大学文学部教授・/ピリチュアケア学・仏教瞑想研究)
倉島哲(関西学院大学社会学部教授/社会学・身体論)
河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター教授/臨床心理学・ユング研究)

島薗進(上智大学グリーフケア研究所所長・東京大学名誉教授/宗教学)

野村理朗(京都大学教育学研究科准教授・認知神経科学)

永澤哲(京都文教大学総合社会学部准教授/宗教学・チベット仏教学)

林紀行(大阪大学医学研究科助教/医師・精神医学・統合医療)

稲葉俊郎(東京大学医学研究科助教/医師・循環器内科・未来医療)

金香淑(目白大学前准教授/文化人類学・韓国シャーマニズム研究・比較文化論)

古谷寛治(京都大学放射線生物研究センター講師/分子生物学)

【研究協力者】

町田宗鳳(ありがとう寺住職・広島大学名誉教授/比較宗教学・仏教研究)

篠原資明(高松市立美術館館長・京都大学名誉教授/美学・まぶさび瞑想、定年退 職)

棚次正和(京都府立医科大学名誉教授/宗教哲学・祈り研究、1年前に定年退職)

齋木潤(京都大学大学院人間・環境学研究科教授/認知科学)

西平直(京都大学大学院教育学研究科教授/教育人間学・教育哲学・臨床教育学)

やまだようこ(京都大学名誉教授・立命館大学特別招聘教授/発達心理学・質的研 究)

小倉紀蔵(京都大学大学院人間・環境学研究科教授/韓国儒教研究)

吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター長/認知心理学)

高橋英彦(京都大学大学院医学研究科准教授/精神医学・脳科学)

中川吉晴(同志社大学社会学部教授/ホリスティック教育学・臨床教育学)

熊谷誠慈(京都大学こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門准教授/仏教 学・ブータン仏教・ボン教研究)

村川治彦(関西大学人間健康学部人間健康学科教授/身体教育学・応用健康科学)

河村博重(観世流能楽師・京都造形芸術大学客員教授)

中野民夫(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授/ソーシャルイノベーショ ン・ファシリテーション論)

木村はるみ(山梨大学大学院教育学研究科准教授/舞踊学)

小西賢吾(金沢星陵大学講師/文化人類学・中国チベット研究)

松嶋健(広島大学大学院社会科学研究科准教授/文化人類学)

須田郡司(写真家・京都造形芸術大学非常勤講師/石の聖地研究)

アルタンジョラー(京都大学大学院人間・環境学研究科、京都大学こころの未来研 究センターヒマラヤ宗教研究共同研究員/文化人類学・モンゴルシャーマニズム研 究)

山田真由美(作曲家・音楽家/音バネ研究)

藤守創(パリ大学科学哲学研究所博士課程、神戸大学大学院医学研究科/統合医療の 認識論的研究・医療哲学)

松田和郎(京都大学学際融合教育研究推進センター特定講師、医師/神経解剖学・脳 神経外科学)

古谷寛治(京都大学放射線生物研究センター講師/分子生物学)

秋丸知貴(滋賀医科大学非常勤講師/美術史家)

トマス・ジョン・ヘイスティングス(日本国際基督教大学財団主任研究員、元東京 神学大学教授/教育学・賀川豊彦研究)

勝又公仁彦(京都造形芸術大学専任講師/写真家)

檜垣樹理(早稲田大学国際教養学部准教授/フランス宗教思想・文学・宗教間対話)

蛭川立(明治大学情報コミュニケーション学部准教授/人類学)

田口ランディ(作家)

太田俊寛(埼玉大学教養学部非常勤講師/宗教学)

魚川祐司(僧侶・仏教研究者)

奥井遼(パリ第五大学日本学術振興会海外特別研究員/臨床教育学・身体論・淡路島 人形浄瑠璃研究)

長谷川千紘(京都文教大学臨床心理学部講師/臨床心理学)

門前斐紀(天理大学・大阪成蹊大学非常勤講師/教育人間学・臨床教育学)



●『体育と教育と医療 ‐オリンピックの可能性』身心変容技法研究会 科研研究年報誌第6号(2017/3/31)

身心変容技法研究会に稲葉が書いた『体育と教育と医療 ‐オリンピックの可能性』の論文です。JPG画像をUpしますが、本研究会の報告書は全PDFもUpされていますので、印刷する場合はPDFをDLしてお読みください。

(→研究年報(PDF)  第6号 本文PDF(8.7MB)(稲葉はP139-146))