Terakoya

国宝『医心方』 寺子屋勉強会(講師:槇佐知子先生)

【医心方】

『医心方』は日本最古の医学書 とされます。平安時代の宮中医官、鍼博士である丹波康頼が編集しました(984年)。

当時の全ユーラシア的な知識は中国を介して日本に入ってきていますが、そうしたあらゆる医学の知識を網羅した長大な医学全集です。

未来の医療を考える前に、まず過去や古代の医療を深く広く学ぶ必要があります。

40年かけた全文現代語訳という歴史的な大偉業をされた槇佐知子先生ご本人から直接ご指導頂く機会を設けました。


【医心方 寺子屋勉強会について】

槇佐知子先生による『医心方』の現代語訳はちくま書房から出版され、巻30まで全33巻あります。毎月1度のペースで全12回の予定です。国宝の書ですが、すべてを解説できるのは全訳された槇佐知子先生しかおりません。きわめて貴重な機会です。

*講義は槇先生が話したいことを自由に話すスタイルですので、すべてを網羅した詳細な解説が行われるわけではありません。<学問は自分で調べて自分でするものだ>というのが槇先生の基本スタイルです。この会をきっかけに各自が深く学んで頂ければと思います。

*講義中の写真撮影はご遠慮ください。(個人的に撮影された写真をWebにUpされるのもご遠慮ください。槇先生のご要望です。)

<参考図書>槇佐知子「医心方の世界 : 古代の健康法をたずねて」人文書院人文; 新装版 (2014/6/10)


画像提供:東京国立博物館

医心方(半井本)

巻一(医学概論)

巻十三(虚労篇)

巻十六(腫瘤篇)

巻二十三(産科治療・儀礼篇)




【年間スケジュール】

◆2016/1/30 第1回 医心方寺子屋@国分寺

【講義範囲】巻一A 医学概論篇 巻一B 薬名考

◆2016/3/13 第2回 医心方寺子屋@ソフィア フィトセラピーカレッジ(自由が丘)

【講義範囲】巻二A 鍼灸篇1─孔穴主治 巻二B 鍼灸篇2 施療 巻三 風病篇

◆2016/4/23 第3回 医心方寺子屋@武蔵野スウィングホール(JR武蔵境駅北口 徒歩2分)

【講義範囲】巻四 美容篇 巻五 耳鼻咽喉眼歯篇 巻六 五臓六腑 ─五臓六腑気脈骨皮篇

◆2016/5/14 第4回 医心方寺子屋@国分寺駅ビル丸井8階 Lホール(JR国分寺駅直結)

【講義範囲】巻七 性病・諸痔・寄生虫篇 巻八 脚病篇 巻九 咳嗽篇

◆2016/6/12 第5回 医心方寺子屋@三鷹ネットワーク大学(JR三鷹駅南口 徒歩2分)

【講義範囲】巻十 積聚・疝瘕・水腫篇 巻十一 痢病篇 巻十二 泌尿器科篇

◆2016/8/20 第6回 医心方寺子屋@国分寺 駅ビル丸井8階 Lホール

【講義範囲】巻十三 虚労篇、巻十四 蘇生・傷寒篇、巻十五 癰疽篇 悪性腫瘍・壊疽

◆2016/9/25 第7回 医心方勉強会@武蔵野プレイス 4階スペースA

【講義範囲】巻十六 腫瘤篇、巻十七 皮膚病篇、巻十八 外傷篇

◆2016/10/16 第8回 医心方勉強会@日本獣医生命大学 会議室 E棟1階

【講義範囲】巻十九 服石篇Ⅰ 巻二十 服石篇Ⅱ (薬害治療) 巻二十一 婦人諸病篇

◆2016/11/19 第9回 医心方勉強会@武蔵野スウィングホール10階

【講義範囲】巻二十二 胎教出産篇 巻二十三 産科治療・儀礼篇 巻二十四 占相篇

◆2016/12/3(土曜:13時30分~16時30分) 第10回 医心方勉強会@武蔵野スウィングホール10階

【講義範囲】巻二十五 A 小児篇Ⅰ 巻二十五 B 小児篇Ⅱ 巻二十六 仙道篇

◆2017/2/4(土曜:13時30分~16時30分) 第11回 医心方勉強会 @武蔵野プレイス 4階スペースA

【講義範囲】巻二七 養生篇 巻二十八 房内篇 巻二十九 中毒篇

◆2017/3/12(日曜:13時30分~16時30分) 第12回 医心方勉強会 @武蔵野公会堂 会議室

巻三十 食養篇 まとめ


<医心方勉強会 Fbグループ>

*槇先生のご希望により、<参加者の直接の知り合いの方>、又は<連絡先や所属を明らかにできる方>に参加者を限定しています。

参加ご希望の方は、稲葉俊郎のFbまで、【自己紹介、所属、医心方Fbグループ参加希望の旨】をお送りください。槇先生に確認の上で登録させて頂きます。勉強会内容の情報管理のため、このようにさせていただいております。何卒ご理解ください。



【各巻 解説】(ちくま書房リーフレットより)

●医心方 巻一A 医学概論篇

→「ヒポクラテスの誓い」をそのぐ東洋の医の倫理、古代オリエント医学と薬学の基礎と心構えを、29文献から選出・編集した書。『医心方』の医心方たる由縁の巻である。

●医心方 巻一B 薬名考

→本書は他の巻とは違い、大半は不明となっている当時の動植物・鉱物の薬名を訳者が中薬大辞典や証類大観本草ほかを訳しつつ探索。同薬異名、異薬同盟などを解明する。

●医心方 巻二A 鍼灸篇1  ─孔穴主治

→紀元前から唐代までの鍼灸書から撰出した当巻は『医心方』30巻中唯一、鍼博士康頼の自序がある入魂の巻。孔穴名や壮数、禁鍼・禁灸のツボや为治の対象が現代とは微妙に異なる。タイムカプセル『医心方』に、進化を続ける現代鍼灸をかさねた温故知新の書である。

●医心方 巻二B 鍼灸篇2 施療 

→来診者の徒歩・乗り物の種類に応じた待ち時間、感情の起伏や消化時間と鍼灸の是非、男女・年齢・体質による鍼灸の工夫、灸の点火法の貴重なデータ等の実用例から鳩摩羅什が医書を訳した証明まで。陰陽道、天文、易と鍼灸、九九の歴史に新たな資料となる記述があり各分野必見の書。

●巻三 風病篇

→本来、風病は病名ではなく病因を指し、中風は邪風による損傷、癩は邪風による皮膚の異常だった。インドの原始仏教や道教、神道、密教、陰陽道とのかかわり、祭祀や習俗の原点がみえ各分野の研究に新たな視座を与える。

●巻四 美容篇

→髪に関するさまざまな悩みや美肌への願望は昔も今も同じ。洗髪剤、養毛剤、毛生え薬、白髪対策。シミ・ソバカス、イボ・ウオノメ、ナマズ肌、ワキガの治療法。現代人も驚く美肌パック。魏や隋の後宮の秘方等々『長恨歌』や『源氏物語』を読む上でも参考になる。

●巻五 耳鼻咽喉眼歯篇

→蓄膿症・血膜炎・虫歯など七十一章に渡って耳鼻科・眼科・歯科に関わる当時の理論や治療法を載せる。

●巻六 五臓六腑 ─五臓六腑気脈骨皮篇

→胸・心・脇・腹・腰・腎・肝・脾・肺・大腸・小腸・胃・胆・三焦・膀胱・筋・骨・髄・肉・皮・脈・気病など、症状のある部位別に分類。現代に生きる湯薬、丸薬、薬酒のルーツや僧の治療法が目立つ。

●巻七 性病・諸痔・寄生虫篇

→男性の性器にかかわる諸病と痔疾、寄生虫症の理論と治療法を収める。痔には仏典からの抄録もある。今昔物語に登場する寸白の正体と治療法など古典や衛生史の研究資料としても貴重な巻である。

●巻八 脚病篇

→脚気・中風・リューマチから瘭疽・アカギレまで。現代の脚気と同定されていた古方の脚気は、『枕草子』の「あしのけ」に該当する手足の病状の総称であった。唐代を代表する医学者でもある鑑真の処方も含み、書誌学的にも重要な巻。

●巻九 咳嗽篇

→今日の医学では咳はカゼの徴候だが、古代中国医学では風病と咳は全く別なものと考えられていた。風病は巻三にあるが、巻九は咳嗽や喘息のほか、呼吸器、胃病、シャックリなどが十八章におさめられている。本書には咳の薬として現代でも著名な処方が見られる。

●巻十 積聚・疝瘕・水腫篇

→種々の結石による激痛のほか、心筋梗塞、潰瘍、穿孔、浮腫、腹水、胃炎、肝炎、黄疸さらに癌を含む重篤な病症や条虫、住血吸虫、回虫など寄生虫症に関する理論と約二百の治療法(温熨法・灸法・洗滌薬・塗布薬・内服薬・薬酒)が、千年のタイムカプセル、国宝「医心方」から初めて蘇る。

●巻十一 痢病篇

→これまで暑気あたりや日射病とされてきた霍乱(カクラン)はどんな病気だったのか。疫病も含む下痢を便の色や症状で分類し、薬方やツボを発見した古代人。現代の処方や灸の源流や生活史の資料などもぎっしり。

●巻十二 泌尿器科篇

→口渇を伴う多尿と尿閉、錬金術の石薬の副作用による類似症状など、従来の消渇の定説を覆えす理論のほか、泌尿器系の諸症、大小便の便秘と失禁、血尿、血便、下血、結石などについての諸説とユニークな治療法を収める。

●巻十三 虚労篇

→唐王朝の権威を示すスーパー・メディスンや雅楽最大の曲《蘇合》となった秘薬など、煎薬・湯薬・丸薬・散薬・生汁・薬酒・薬粥・食物・浣腸・灸・摩擦等、疲労回復法を収録。

●巻十四 蘇生・傷寒篇

→古典に登場する蘇生法や薬法には、現代の習俗や年中行事にかかわるものもある。王朝人を脅かしたもののけは、中国からの外来思想であった。傷寒では著名な張仲景の説は載せず、他の多くの文献の学説や治療法を紹介、従来の傷寒=チフス説が覆える。

●巻十五 癰疽篇 悪性腫瘍・壊疽

→古代の癰疽(悪性腫瘍・壊疽)には、現代病といわれる糖尿病、癌、結核、性病など重篤な病気が含まれている可能性がある。その原因がストレスや食生活のほか錬金術による薬(水銀・砒素)の服用にあると指摘し、状況に応じた治療薬、方法を呈示。現代医学の基本をここに見る。

●巻十六 腫瘤篇

→生命にかかわる根の深い疔や、口中のできもの。結核性の瘰癧がつぶれて瘻管となったものや、潰瘍、瘤、さまざまなできもの、腫れもの等々の治療法を四十一文献から転載している。

●巻十七 皮膚病篇

→現代医療でも治療困難な皮膚病と、古代人は如何に戦ってきたか。0.3 ミリのヒゼンダニの存在を裸眼で確認したり、洗浴、瀉血、排膿、切断、灸、罨法、塗布薬、内服薬など工夫をこらした。現代医療に通じるものや『ヨブ記』の灰治療に共通するもの、梅毒の定説を覆す記述等々を満載。

●巻十八 外傷篇

→湯火によるヤケド、打ち身、くじき、骨折、毒虫・毒蛇や獣による咬傷、狂犬に咬まれたときなど、古代の人々は、どのような知恵で手当てをしてきたのだろうか。

●巻十九 服石篇Ⅰ

→古代中国の道教の人々は金石玉丹で製薬した。いわゆる錬金術で草薬より薬害が劇しく、誤れば死を招く。そのため超人的な修行をした者にだけ製法が伝えられた。本書には服石の禁忌と薬害の治療法や唐招提寺の開祖鑑真の秘方がある。

●巻二十 服石篇Ⅱ (薬害治療)

→紀元前から不老長寿薬として、極秘に製法が伝授された錬丹術(錬金術)。その薬は賢者の石とか仙薬と呼ばれたが、百種以上の薬害があった。現代にも通じるその治療法を初めて明らかに。

●巻二十一 婦人諸病篇

→乳房や子宮のポリープ、人には言いづらい多様な症状についての治療法が網羅された『婦人諸病篇』。国文学に精通する筆者が「医心方全訳精解」に 30 年を費し、遂に著わす本書は、王朝文学や人間学、社会史、女性史、宗教など各分野に新しい視座を与える。

●巻二十二 胎教出産篇

→妊娠月別針灸禁止のツボ及び諸注意、胎教、ツワリの治療法、妊婦と胎児のための養生法、流産防止と妊婦の諸病の治療法ほか、胎児と母体保護のための三十七章より成る。国宝半井本の中で流転の運命をたどった貴重な巻。

●巻二十三 産科治療・儀礼篇

→既刊の巻二十二に続く産科篇。穢れの思想の源流を始め、出産時・産前産後の禁忌・呪法・儀礼のほか、難産・逆児・死産や産後の諸症に関する理論と治療法を五十章にわたって収める。仏典からの抄録、奇想天外な薬剤等、考古学・歴史・古典・民俗学に役立つ。

●巻二十四 占相篇

→不妊の悩みの解決法、男女の生み分け方、生年月日、時刻、星宿、七神、人相、体形等による占い、父母兄弟姉妹との関係、わざわいを避けるための命名法、孔子や伍子胥の人相もあり、歴史や古典が面白くなる必見の書。

●巻二十五 A 小児篇Ⅰ

→儀礼、命名、育児、治療など八十八章。出生児の大半が六歳前に死亡した古代の命名や儀礼・呪術にこめた切実な祈り。知恵熱、疳疾、先天的疾病、皮膚病ほか小児特有の治療法を網羅した「小児篇」は二分冊で刊行。現代人が学ぶべき育児法も数多あり、各分野の研究者必携の書。

●巻二十五 B 小児篇Ⅱ

→小児特有の夜泣きやひきつけ、種々の疫病、皮膚病や腫瘍、運動機能障害、言語障害、過食症、けがや誤飲の応急処置等々にみる古代人の驚くべき知恵と工夫。現代中国で癌治療に生かされている薬の記述もある。『源氏物語』の解釈や民俗学、動植物、土石鉱物の研究にも役立つ貴重な書。

●巻二十六 仙道篇

→何日も飲まず食わずで耐える術や丸薬、虎・狼・鬼を避ける術から、火遁水遁の術まで、これまで架空の人物とされてきた仙人たちのさまざまな処方―忍法虎の巻とは、この巻のことを言ったのでは、と思われるおもしろさ。

●巻二七 養生篇

→健康や養生に対する老荘哲学の理念、精神衛生、未病対策などが盛り込まれ、さまざまな分野の研究者に役立つ。健康に適した日常の坐臥・歩行・姿勢、衣食住や罪に対する意識など、興味深い知識が満載されている。インドのバラモンの秘方や吐故納新術、ヨーガや太極拳、五禽戯のルーツ、庚甲信仰、ひなまつりの起源にもふれる。

●巻二十八 房内篇

→かつては性愛の秘本として医心方の代名詞にされ、"発禁の書"となった「房内篇」。国文学に精通する筆者が「医心方全訳精解」に 30 年を費し、遂に著わす本書は、王朝文学や人間学、社会史、女性史、宗教など各分野に新しい視座を与える。

●巻二十九 中毒篇

→食事・酒・水に関する諸注意、飲食・飲酒による諸症の治療法、断酒法、食べ合わせと食中毒、誤って異物を呑みこんだ場合の救助法など、古代ならではのユニークなものから現代に通じるものまで五十一章に収める。

●巻三十 食養篇

→天地陰陽の交わりによって五行の気を享けて生じた穀物 24 種、果物 41 種、肉類 45 種、野菜 52 種を収める。その効能だけでなく、なまだと害のあるもの、多食してはいけないもの等の指摘もある。食文化を知る上で必見の巻。


【参考サイト】

『医心方』完結に寄せて 槇佐知子(筑摩書房)筑摩書房 PR誌ちくま


槇 佐知子(マキ サチコ)

静岡県生まれ。古典医学研究家。日本医史学会会員。日本最古の医学全書『医心方』と『大同類聚方』の研究に取り組み、独学で現代語に全訳。『全訳精解大同類聚方』の刊行により、1986年に菊池寛賞を、87年にエイボン功績賞を受賞。瀧井孝作の推薦で創作も発表している。著書に『医心方の世界』『日本昔話と古代医術』『自然に医力あり』『日本の古代医術』『くすり歳時記』などがある。『医心方全訳精解』全30巻をちくま書房から刊行した。